「楽劇の祭典」の活動
活動目的 : 日本の伝統的楽劇としての能・文楽・歌舞伎などを踏まえつつ、西洋管弦楽やオペラの表現法などを取り入れることを通して、その現代化、国際化を目指す創造的活動を行う。
活動概要 : 日本の三大舞台芸術である能・文楽・歌舞伎を中心とする音楽祭(フェスティバル)「楽劇の祭典」(主催、関西楽劇フェスティバル協議会)の活動を2001年以来、行っている。毎年の「楽劇の祭典」では既存団体の公演に名義上の参加してもらうもの、あるいは各種団体と協議をして当方の希望に沿って制作してもらう公演というのもあるけれども、協議会が自ら制作する公演も毎回、少なくとも一つは設けるようにしている。
その代表的なものの一つは、2003年度の「復元『阿国歌舞伎』」。同年は歌舞伎発祥四百年ということで、当協議会では京都鴨川の四条河原に舞台をしつらえて、400年前の阿国歌舞伎の復元上演を試みた(台本、小笠原恭子 演出、故野村万之丞)。
第二として2005年度特別公演としてNHK大阪ホールで開催した「楽劇『豊後掾Bungonojo』」。常磐津、清元など豊後系浄瑠璃の源をなす豊後節と、その創始者・宮古路豊後掾を主題とする作品である。この作品でも、心中を主題としつつ官能的な節回しをもった新しい豊後浄瑠璃が登場し、人々に熱狂的に迎えられていく状況を劇中劇(江戸中村座における上演。復曲、故人間国宝・常磐津一巴太夫)の形で表現した。
三つ目には、「楽劇の祭典」十周年記念公演として兵庫県立芸術文化センター・大ホールで上演した「楽劇『保元物語』」。この公演では、梅若玄祥(現、六郎)氏に主演とともに演出面から登場人物の所作と舞と装束とを担当していただいた。そしてまたドイツ人演出家の故マンフレート・フーブリヒト氏にも演出に参画していただいた。同氏はワーグナー楽劇のメッカであるドイツ・バイロイト祝祭歌劇場をはじめとして欧米各地の劇場において数多くのオペラや演劇の演出を手がけてこられていた。その特有の照明技法をもって専ら舞台構成の面を中心に総合的な演出をお願いした。
人物と事象の双方にわたり内面的な彫琢に意を用いるワーグナー楽劇の照明法と舞台造りとは、能楽の静的で重厚な本性と誠によい調和を示しており、能楽的所作と舞台構成の妙味を一段と際立たせる効果を発揮していた。
また、この『保元物語』では音楽面においても、伝統的な能の音楽と西洋管弦楽との協奏を試みた。この部面では作曲家武内基朗氏の貢献が大である。音律、音階そしてリズムなどの点において本質的に相容れない能楽の楽曲と、西洋管弦楽曲とをいかに調和・統合するか、この難問をめぐり数ヶ年にわたる実験的研究を重ね、その成果が同作品には反映されている。
詳細は「楽劇の祭典」のホームページwww.gakugeki.org を御参照ください。